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未来へつなぐ日本の記憶 昭和SLグラフィティ〔北海道編(下巻)〕

對馬好一 / 橋本一朗

発行
フォト・パブリッシング
判型
A4変判・並製
ページ数
104ページ
発売日
2022年6月22日
ISBN
978-4-8021-3327-2 C0026
定価
1,980円(本体1,800円+税10%)

明治から昭和にかけ、北の大地、北海道の開拓に奮闘した蒸気機関車(Steam Locomotive=SL)は先の大戦後のエネルギー改革の荒波に抗しきれなかった。昭和43(1968)年8月に函館本線札幌周辺で道内初の電車運転が始まり、同年10月の国鉄ダイヤ全面改正、いわゆる「よん・さん・とう」では、小樽~札幌~滝川間117.3㌔の電化区間が誕生した。その結果、それまで主役だったSLが急速に電車、電気機関車に置き換わっていった。そのほかの線区でも、気動車やディーゼル機関車の比率が高まってきた。
 そうした中で、郷愁と共に、巨大なエネルギーで重い貨物列車や高速急行列車を牽き、黒い煙と得も言われぬ石炭が燃える匂い、そして轟音と振動を産み出すSLの魅力は増すばかりだった。私たちは、ジェット機のような音と共に疾走するC62重連の雄姿を追い、豊かな北の恵みを首都圏・近畿圏に運ぶ重量貨物列車の先頭に立つD51やD52を待ち構えて撮影した。
 道北・道東地方に比べて早めに春を迎える道南地区の幹線を走るこうした大型SLの力強さは何物にも代えがたかった。その一方で、支線や私鉄で最後の炭鉱を守る石炭列車を牽くSL達が、閉山・廃線のその日まで、日本のエネルギーを支え続けてきたことで、今日のこの国の繁栄が築かれたことを忘れてはいけない。
 航空機や新幹線が発達する前、青森から青函連絡船で北海道に足を踏み入れた人たちは、函館発の長距離列車で道内各地に向かった。本書では、そのうちの1本、19時間半をかけてオホーツク海沿岸の網走にまで達する列車を特に取り上げて紹介する。普通列車で札幌に至り、寝台車を含む夜行急行「大雪6号」として北の大地を横断、険しい常紋峠を越え、そのまま朝の一番列車として寒さが厳しい網走にたどり着くその列車の中には、様々な人生があり、生活があった。
 令和2年9月に上梓した『未来へつなぐ日本の記憶 昭和SLグラフィティ〔北海道編(上巻)〕』から1年半以上の歳月が流れてしまったが、平成のC11の活躍を含め、2冊合わせて、極寒の地で日本経済の発展を支えた鉄の塊の活躍を記録に残したものである。